参考資料

Unity上でセルルックCGアニメ映画「HELLO WORLD」のシーン再現にチャレンジ

Unite 2019で行われた「Unity上でセルルックCGアニメ映画「HELLO WORLD」のシーン再現にチャレンジ」のレポートが公開されています。
http://jp.gamesindustry.biz/article/1909/19093002/

Hello Worldの制作にあたって命題となったのは「従来の作画ベースのアニメ作品に匹敵するセルアニメルックな3DCG作品を制作する」こと。制作パイプラインは3ds Max、After Effectsが使用された。

制作上で大変だったのは,手描きの作画に見劣りしないレベルで各キャラクターの豊かな表情表現を実現することや,3DCGっぽさを感じさせないようにする最終コンポジット工程だった。顔演技から身体演技まで、ほぼすべてを手付けのアニメーション。

プロジェクトスタートの発端はUnity Japan側からの提案だった。「映像作品を制作するためにUnityに今後、どういう取り組みが必要なのか」というテーマをリサーチするためにこのプロジェクトを発案した。

このプロジェクトではUnity Japan側とグラフィニカ側でそれぞれ異なる劇中のシーンを選択し、これを本番映像制作に用いた3Dモデル、ボーン構造、テクスチャなど,各種グラフィックスデータをゲームエンジンのUnityへコンバートして利用し、劇中の表現に迫る映像をUnity上でリアルタイムで動かそうというゴールが掲げられた。

Unity Japan team

キャラクターのアニメーションはMeshSyncのScene Cacheを利用することとした。機能としてはAlembicのジオメトリキャッシュと同じだが、Unity上で非常に高効率に再生できるように最適化されていることが特長となっている。Scene Cacheを使うとタメツメをUnity上で視覚的かつ効率的に作業できる利点もあった。

Graphinica team

3DモデルのアニメーションはAlembicのジオメトリキャッシュを用いた。背景オブジェクトはFBX、カメラやマテリアルデータなどはJsonで出力しUnityへ持っていた。

マテリアル設定はマルチレイヤー構造として設計されたテクスチャ群を含め、3ds MAX側で制作していた本編データをほぼそのままUnity側にコンバートしUnity側のマテリアルシステムで同等の再現した。ライティング/シェーディングについてはUTS2を使用。

影はUnity側のシャドウマップを使いつつも、キャラクターに対する精細な影についてはDirectX Raytracing(DXR)ベースのリアルタイムレイトレーシング機能を使った。

輪郭線については「Pencil+ 4 Line for Unity」を採用。線描品質についても不満なし。

After Effects上で調整・合成していく処理についても、できるだけUnity上で同等のプロセスが実現できるように専用のコンポジットレイヤーツールを作成した。

今回のHello WorldのUnity版制作プロジェクトを振り返り、その映像のでき映えをグラフィニカは「85%のデキ」と評価した。「-15%」はどこにあるのか。

本家版は作画アニメ作品風の見た目、そして見やすさを重視して制作したため「物理的には正しいのかもしれないが、アニメ表現としては好ましくない表現」をAfter Effects工程で1コマずつ調整していくことがあった。Unity版ではコンポジットレイヤーツールを用いて調整しても「物理的に正しい表現」がそのまま残ってしまった箇所があった。

Unityを使っての映像制作は従来の制作スタイルからコストカットにつながる部分を見つけられたかどうか?

これに関しては阿尾氏と堀内氏は共に「あったように思う」と回答。二人ともレンダリングとAfterEffects工程のコストカット、および制作のスピードアップにゲームエンジンの活用は貢献できるのではないかという内容の発言を行っていた。

  • うまくアセットなどのセットアップさえできてしまえばレンダリングは圧倒的に短縮できる
  • いわゆるトゥーンシェーダを用いればアニメタッチのグラフィックスとして十分満足のいくクオリティが出せる
  • 多段レイヤー前提のAfterEffectsを用いた調整・合成の工程の大部分を全面圧縮できる

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