参考資料

Pencil+ 4 Line for BlenderをはじめとするBlender環境で制作された、スタジオカラーの新作短篇映像『EVANGELION:3.0(-46h)』

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』パッケージ版収録の新作短編映像『EVANGELION:3.0(-46h)』のメイキング記事が公開されています。

https://cgworld.jp/article/202307-cgw299-eva.html


新作短編映像の制作で実現したBlenderとPencil+のワークフロー

従来、CGIパート制作のメインツールに3ds Maxを使用していたが、本作ではBlenderを採用。ライン描写に優れたレンダリングプラグイン「Pencil+」の開発元PSOFTに対してBlender版の開発を依頼。従来製品と同様の使い心地を目指して改良を重ねつつ、2022年時点の評価版を本作の制作に導入した。

 

Blender&Pencil+環境の整備

3ds MaxからBlenderに移行するプロジェクトがスタートしたのは2019年。その際の目標は大きく2つあった。1つはこれまで3ds Maxで制作したアセットをそのままBlenderでも使えるようにすること。もう1つは3ds Maxで使用していたツールをBlenderでも用意して同じ使用感をキープすることだった。

 

Pencil+ 4 Line for Blenderの開発の過程。

 

α版、β版の検証。Pencil+ 4 Line for Blenderの開発過程で動作検証を行なった際に洗い出された問題点の画像。これらはバグやBlenderの仕様に起因するものが含まれる。

 

スムージンググループのライン描画。

 

Pencil+ 4 Bridge。3ds MaxやMayaなど、他ソフトのPencil+ 4 Lineの設定を受け渡しできる機能。

 

Pencil+ 4 ライン合成ヘルパー。

 

Pencil+マテリアルエディタ。Blender内で使用されているトゥーンマテリアルを一覧できる。3ds MaxではPencil+専用マテリアルがあったが、Blenderではカラー社内で独自開発したマテリアルを使用している。

 

オブジェクトツール。使用モディファイアーをリスト化し表示・適用することができる機能を搭載した。

 

アセット管理ツール「tag_manager」。セットのパブリッシュと読み込み、パーツやシーン色の差し替えなどが可能。プロジェクトの選択・アセットのディレクトリ階層が「3階層or4階層」の2パターンでの運用ができる。

 

ボーンツール。ポーズモード中でもある程度編集モードと同じ挙動を行えるように開発された。

 

選択セット。3ds Maxの「選択セット」を踏襲したツールで、オブジェクトもしくはアーマチュア内の骨の登録が可能。

 

アクションコピー機能。アペンドによるアクション合成ではなく、キー情報のテキストベースでの書き出しと読み込みを実装することにより、部分的なアクションの合成や既存アクションへのキーのマージを可能にした。

 

レンダーアセット機能。基本機能ではレンダリング可能な全てのビューレイヤーをレンダリングするが、この機能を使えばビューレイヤーごとにレンダラやマテリアル出力の切り替えを行いつつレンダリングできる。

 

新作短編映像『EVANGELION:3.0(-46h)』

本作に登場するエヴァ正規実用型2号機α 臨時暫定仕様とエヴァンゲリオン インフィニティ(仮称)はどちらも『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ制作時に3ds Maxで作成したモデルをベースとしている。

それをBlenderにコンバートし、グリースペンシルやコンポジットノードなど、Blender特有の機能も活用しつつ本作のデザインに合わせてモデリングしていった。

 

Blender機能の活用。

3ds Maxからコンバートしたベースモデルに対して、グリースペンシルでデザインのアタリを付け、それをガイドとしてモデリングしていった。

 

色分けが活きたレンダリング素材。3Dセル素材は、ノーマル色、1号影、2号影、ハイライトの4つ。テクスチャによって色分けしている部分のマップ素材、マスク素材の3つずつを出力。

ノーマル色素材

1号影素材

2号影素材

ハイライト素材

 

Pencil+で出力したライン素材、落ち影用の素材に加え、撮影処理用の追加素材としてハイトマップ、目の透過光用のマスク素材、ケガレ表現のエフェクトをAE上で貼り込むためのUVマップ素材が使用された。

 

プロジェクトスタジオQ 謹製のリグ。

Blenderの機能や市販リギングツールなどを試してみたところ、カラーでの従来の使い勝手を満たすものではなかった。プロジェクトスタジオQに独自のリグ制作を依頼し、キャラクター固有の曲げ伸ばしや誇張表現に対応したリグを入れることが可能になった。

 

迫力のアクションカット。

 

ライン表示。巨大感の演出に、ラインの強弱が大きな役割を果たしている。
画面の手前は力強さを見せるために太く、奥の方は黒潰れしないように細く見せる必要がある。3ds Maxではレンダリング時に行なってきたこの調整作業を、BlenderではPencil+のラインノードの減衰設定機能で行なっている。

 

着地モーション。

 

巨大感を感じさせるカメラワーク。

 

Blender以外を使用したカット。ここでは例外的に3ds Maxのパーティクル機能が使われている。

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