参考資料

IDOLiSH7「Mr.AFFECTiON」MVメイキング

IDOLiSH7「Mr.AFFECTiON」MVのメイキング記事が公開されてます。
https://cgworld.jp/regular/202001-idolish7-vol1.html
https://cgworld.jp/regular/202002-idolish7-vol2.html
https://cgworld.jp/regular/202003-idolish7-vol3.html
https://cgworld.jp/regular/202004-idolish7-vol4.html
https://cgworld.jp/regular/202005-idolish7-vol5.html

MVに隠された要素

メンバーを表す音楽記号

メンバーの名前の数字にならった「多角形」

 

全編を通して盛り込まれた最高峰のVFX

始まりのトレーラー映像

細くうねるライン状のオブジェクトをエミッタとし、FumeFXで上空に伸びるカーテン状のボリュームをつくり出してオーロラを表現した。

IDOLiSH7の文字が浮かび上がる冒頭の蜘蛛の巣

Cobwebを使用して作成した蜘蛛の巣の3Dモデル。Cobwebは蜘蛛の巣やケーブル配線といった複雑なデザインに特化した3ds Max用のModifierプラグイン。

tyFlowによる糸の上に大量に配置された氷の粒。プリセットにあるStoneをバインドで糸に接着させている。1粒は120ポリゴンだが、全体で12万粒も配置しているため、氷の粒だけで1,440万ポリゴンにものぼる。

さらに蜘蛛の巣と合わせると1,600万ポリゴン以上となるが、使用感についてはそこまで重たい印象はなかったとのこと。ピンボケ表現はV-RayのDepth of Fieldで処理しているため、レンダリング自体は重めな印象だったという。

Modifier Listの一覧。積み重ねてあるXFormやFFDは、カメラに合わせたシルエットの微調整のためのもの。蜘蛛の巣の動きはFlexのフォースを利用しており、こちらで設定した糸の揺れに同期して前述の氷の粒も動くようになっている。

浮遊する細氷。画面をキラキラと舞っている氷の結晶も、これまでと同様にtyFlowで作成している。細氷のボケ具合も蜘蛛の巣のボケに合わせられるよう、レンダリング時にV-RayのDepth of Fieldで処理した。また、氷の粒はカスタムモデルを作成。現実にはありえない七角形の結晶にし、作品をイメージしている。

 

tyFlowを用いた凍結する古城

扇状に広がる氷の中からランダムに次の扇が発生するというサイクルを繰り返す設定だが、ターゲットに対してまっすぐ進んでしまうと不自然になるため、ターゲットに向かう角度に誤差を設定し、複雑な動きを実現した。

橋のハイモデルと橋のローモデル。データ容量の大きなハイモデルのままエフェクトのシミュレーションを行なってしまうと、計算に余計な時間がかかってしまう。そのため、エフェクト用のローモデルを作成する必要があったが、まだベータ版ということもあり、tyFlowのジオメトリへのバインドでは、他のオブジェクトへの受け渡しがうまく機能していなかった。そこで橋と門のローモデルでは、それぞれ継ぎ目をつくらないように工夫している。

凍っていく水のエフェクト

凍結素材のtyFlowのフロー。レイアウト時に決まった情報を基に凍結素材を作成し、動きはこのフローで制御している。一定の時間ごとに、親パーティクルの進行方向に対してランダムの値を足した子パーティクルを発生させ、それぞれの軌道をtySplineで拾うことで、枝状に分かれていく動きを再現した 。

ひとつの素材では凍結した枝と枝の隙間が目立ってしまうため、複数の素材を重ねている。同じ素材を重ねるのではなく、ランダムの値を入れ替えたものを複数用意して重ねることで、隙間を埋めつつ複雑な表現を実現した。

After Effects上で加工した素材。輪郭のハイライトを強く引き出している。

凍結時に散らばる氷片のシミュレーション。凍結時の挙動を誇張し、情報量を増やすために、氷の広がる範囲に合わせて破片のパーティクルを散らした。

靴に氷が付着するように調整されたフロー。よりリアルな映像にするために、七瀬さんの足元にも氷の表現を追加。靴の形状に合わせて、氷が浸食していくというフローを作成した。

凍結時の冷気の素材。Phoenix FDを用いてシミュレーションしている。のコリジョンの高さを調整し、煙の発生源として設定。フォースや煙を散らすためにラティスをかけた円環体を使用した。

吹雪の追加素材。カット後半にかけて雪の勢いが強くなっていくという構成だったため、Phoenix FDによる煙のシミュレーションを用いて、カメラの軌道上に煙を発生させた。

撮影工程での調整を終えた完成画

変身シーンの炎のエフェクト

FumeFXを用いて、炎のベロシティ情報を設定した。このベロシティ強度を調整することで炎の勢いや形状、挙動などに影響を与えることができる。

パーティクル化する際は、STOKE MXというプラグインが使用された。ベロシティ情報を用いて大量のパーティクルを出現させ、メッシュ化して表示している。その後、MagmaFlows モディファイアで調整していく。

ジオメトリオブジェクト生成ツールであるFROSTを使用してメッシュ化する。FROSTはパーティクル等のポイントデータファイルから、単一のメッシュを生成することができる3ds Max用のプラグイン。メッシュ化したデータをモディファイアで微調整をして完成となる。

変身シーンの羽のエフェクト

ここでもtyFlowが活躍した。まず、回転しつつ飛散していく羽を制作する。羽を飛び散らせながら発生させる環形のオブジェクトは、最初から置いておくものと、途中から出現するものの2種類を用意。

AEによるエフェクト処理後。グローを付加し、羽を光らせている。また、途中から時間のながれを変化させる演出が施された

数多の光が舞う幻想的な古城のダンスシーン

超小型宝石ドローンの動きの例。RealFlowを用いて、リズムの強弱に合わせて形が変化するオブジェクトと、ダンスに合わせて動く「空気」をシミュレーションする。

メンバーの身体の動きによって周囲の空気にながれが生じるが、その際に変化するベロシティ情報に乗って超小型宝石ドローンが動くイメージだ。そのシミュレーションで得られたパーティクルをKrakatoaのPRT Loaderで読み込み、MagmaFlowsを使って粒子の動く方向で色を、粒子の速度で色の濃度を設定する。

超小型宝石ドローンのエフェクト表現を極める

CGレイアウトに従い、超小型宝石ドローンと細氷を配置して確認・調整する。

被写界深度と超小型宝石ドローンの光を設定する。被写界深度はAEではプラグインで調整。

撮影でさらにディフュージョンを追加。

 

シルエットや美しさを徹底追求したワイシャツ衣装

ワイシャツデザイン

Marvelous Designerで制作されたワイシャツ衣装。衣装制作をしていく中で、当初はシルエットがピッタリになりがちで、衣装を着て動くとタイトさが顕著にみられたため、遊びが必要だった。そこで全体的にデザイン画よりもゆとりをもたせている。

アクセサリーデザイン

衣装

美しい衣装のシワの探求

ワイシャツのシワの出方に関係する生地の柔らかさなどは、オレンジのエフェクトチームが試行錯誤してバランスを探っている。シワが多くなると汚い影が出てしまうため、手作業で消している箇所もあるというが、ライティング工程でも調整を重ねることで、極力汚い影が出ないようにされた。

綺麗なシルエットとシワの調整

現実的な正しさより美しく見えるシルエットを探る

風の向きを意識したワイシャツの動き

めくれるワイシャツに対する変態的なほどのこだわり

このカットの動きは予想よりも大人しいものになり、考えていたようにワイシャツがめくれなかった。そのため、手を伸ばす手前からシミュレーションを一時停止し、Marvelous Designer内で左手側下方向に引っ張った状態に設定してから、再度シミュレーションをかけ、反動でめくれるようにしている。

激しい動きに合わせたワイシャツの動き

あまりに速いターンだと通常のシミュレーションは難しい。フレーム間の速度についていけず、クロスが置いていかれてしまう。そのため、ターン速度を50%まで落とし、かつ画面に映らない部分は身体に固定する形で対応した。

ワイシャツのデザインと重力の調整

このカットでは、身体を捻る動作までは重力を小さくして動きを出し、捻った直後に重力を大きくしワイシャツが持ち上がりすぎないように抑え、落ち着いたところでまた重力を軽めにするという三段階の調整が施された。シミュレーションの途中からでも調整ができるMarvelous Designerの利点を最大限に活かしている。

 

アイドルたちを活かす舞台を描き出す「背景美術」

TVシリーズのアニメなどでは、1話あたりおよそ300カットほどあり、カットの数だけ背景美術が必要となる。約3分半の本MVでは、80ほどの背景美術が用いられた。

MVの舞台となる古城外観の美術設定

カメラの寄りに耐える描き込み

ふたつの表情を見せるコンセプトアート

コンセプトアート

背景美術

コンセプトアート

背景美術

カメラワークを支えた遠景背景

セル参考と背景美術。背景を描く前には、セル参考を必ずもらうという。今回の場合は背景モデルが映る箇所を黒塗りで表しているが、他にもメンバーがどのように移動するかなどをあらかじめ把握しておくことで、カメラに映らない部分の描き込みを抑えることができる。

また、カメラワークが速いところは、ディテールよりも見えやすさを重視して、木炭デッサンのようにざっくりと明暗の表現だけに留めるなど、面で見る描き方を意識しているそうだ。

背景美術

煙に飲み込まれる七瀬 陸さん

美術監督の仕事は、まず企画などの初期段階でコンセプトアートを描き、絵コンテを基に美術設定を作成して、ラフボードや美術ボードを手がけ、カットごとの背景美術を仕上げていく。

中でも最初の色を決める工程や設定を考える工程に時間がかかるそうだ。その映像がどのような環境で観られるかという点は強く意識するという。本MVはスマートフォンや家庭用のモニタなど明るい環境で観られることを想定して、ベースは完全にブラックにはしていない。一方で映画のような暗い空間で観る作品は、暗い背景も細部まで視認できるため密に描くそうだ。

コンテンポラリーダンスの演出が光る石壁の部屋

美術素材。線画の美術設定を基に背景モデルを作成し、背景美術で描いたこの壁の素材を貼り込む。四方の壁で全て異なる素材を用意しており、よく見ていただくとプロジェクタが埋まっている穴も描かれている。

透明感のある凍った湖の舞台

メンバーがひとりずつ消えていく氷の湖のシーン。湖の氷面、山、空など、パーツで別れている美術素材を、球状の3D空間に配置して360度の空間を表現している。

変身シーンを盛り上げる背景たち

このシーンは背景モデルの形に合わせて背景美術を描いているのだが、同じレンガを並べるだけでは整いすぎたいかにも作り物のチープな印象になりがちだ。そこで背景モデルの形と大きくはズレないようにしつつも、背景美術側で絵を崩して抑揚をつけている。

美術目線から舞台を効果的に補う

3D的なカメラワークのあるカットの場合、レイアウトと形が異なる美術素材にしてしまうと、背景モデルに貼り込む際に素材がずれてしまうため、基本的にはレイアウト通りに描かなければならない。

作業机

ポスターカラー。アナログの背景描画で必須のアイテム。棚にも様々な色の予備を保管。作業机にはいつでも使えるようによく使う色が並べられている。各容器にはプラスチック製のスプーンが差してあるが、これは固まったりカビが生えたりしないようにかき回すためのもの。

アイドルたちの個性を引き立てる振り付け

Vコンテ。仮歌に合わせて場面ごとの演出や衣装などキーポイントとなる部分が文字で説明されている。こちらと絵コンテをあわせて、おおよそのイメージを共有する。

ダンス振り付け用絵コンテの一部。打ち合わせ時には、Vコンテとあわせてこちらも提供された。メンバーの立ち位置やタイミング、振りへの要望などが書かれている。

"ざわめき"のイメージを動きに採り入れたかったそうだが、それをそのまま体の動きで表現してしまうと、バタバタと暴れたような印象になってしまう。最終的に、足をスライドさせる振り付けに。

楽曲のリズム・ビートに合わせて動きをつけた、"音ハメ"と呼ばれるダンスとなっている。楽曲のリズムから少しでもずれると綺麗な形にならないため、ひとつひとつの振りのアクセントの強さまで意識することがポイントだという。

各キャラクターの落とし込み

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