TVアニメ「セスタス -The Roman Fighter-」のメイキング記事が公開されています。アニメの撮影にFlame使ってるのは珍しいですね。MotionBuilderにパーティクルとかあるのはじめて知りました。
https://cgworld.jp/feature/202106-cestvs.html
キャプチャデータを用いた格闘シーン
モーションキャプチャ検証時の収録模様
『セスタス』の制作が決定した後に、同社がまず着手したのはモーションキャプチャの検証だった。
キャプチャはVICONで行われており、MotionBuilderにてリアルタイムプレビューを実施。収録後のプレイバック再生では、コンテのレイアウトやパースペクティブビューなど、様々な角度で確認を行うことができた。
モーション収録とリアルタイムプレビュー
非接触のまま収録したデータを後で修正する方法はコストがかかるとわかったため、収録時は元プロボクサー亀海喜寛氏監修のもと、JAEスタッフがスーツ内にプロテクターを入れ、実際に殴っている。
ShougunとMotionBuilderをつなぎ、リアルタイムプレビューできるようになっている。監督や演者は、身体を動かしながら実際のキャラクターの体格での見映えを確認し、演技を決めていった。
収録後、モーションを再生しながらの確認が行われる。収録中のリアルタイムプレビューでは、演者の全身が映る引きのカメラにしているが、モーション再生のプレビューの際は、実際のカメラをイメージした角度から確認したり、片方の演者を非表示にして主観的な絵で確認したりと様々な角度からプレビューが可能。長尺で段取りの多いアクションの場合、再生スピードを変えてプレビューもできるため、後の工程で「早回し」や「スロー」の可変処理を予定しているカットのイメージもつかみやすく、収録現場でモーションを決め込むことができる。
補助ツール「LM_ShotCreater」
Maya作業はLM_ShotCreaterから始まる。エピソードとショットナンバーを選択するとネーミングコンベンションに沿ったフォルダやファイル名が設定されデータベースの情報を元にショットに必要な背景、プロップス、キャラクター、シェーダがシーンにリファレンスされる。
LM_ShotCreaterによって自動構築されたファーストシーン。カット担当者はカット番号を指定するだけで、必要なアセットが全て準備される。
次にLM_AnimLoaderを走らせることで、MBから出力されたカメラや各キャラクターのアニメーションが自動ロードされるので、ライティングレンダリングの作業へとスムーズに入ることができる。
ツール群は映像制作部 映像ユニットのテクニカルアーティストが作成したものと、技術開発部 テクニカルユニットが開発したものが共存している。ワークフローの根幹に関わるものや効率化のためのツールを技術開発部が担当し、素材分けやエフェクトの追加など絵に関わるものを映像制作部が担当した。
フェイシャルアニメーション
MB上で、「ブレンドシェイプ」と「フェイシャルリグ」の併用によって表情を細かく調整。
アクションシーンのアニメーション
プロのアクターによるモーションキャプチャの動きを壊さない程度にレイアウトに合わせてポーズを修正し、2コマ打ちでもアクションか省かれないようにタイミングを調整。
原作のテイストを活かしたキャラクターづくり
キャラクターモデルの変遷
キャラクターは、最初に主人公のセスタスから制作された。アニメのキャラデザインでは通常の2Dによるデザイン案をあえて起こさずに、原作のコマから全身、表情、腕などのパーツを抜き出すことから始められた。
実線の表現には、Pencil+ 4 for Mayaが使用されている。
頭部は初期ラフ案から主人公の少年感やあどけなさを意識し、丸みのある方向に修正調整が行われた。
身体は引き締まった軽量級な印象に調整を行なっている。
色設定
素体モデルの作成
左側が今作用に作成した素体、右側がスカルプトモデルをリトポしただけの状態。
上から「ワイヤーフレーム表示」、「デフォルトシェーディング」、「トゥーンシェーディング(本番用は固定影などのTEX要素も含む)」。トゥーンシェーディングでライティングした際に筋肉の立体情報がなるべく明確にシャープに反映されるよう、隆起に沿った分割にしつつ立体を強調する形で調整が行われている。また、首から下の素体部分は形状UV含め全キャラ統一されている。
MotionBuilder主軸のワークフローでさらなる効率化を図る
ボディリグ&セットアップ
キャラクターリグはIK、コントロールリグの両方で動かせるよう設定されている。表情もブレンドシェイプとリグで細かい調整が可能。脇や胸筋用にマッスルの補助ボーンを仕込んでいる。
モーション制作はMBで行なっている。動作の軽さやモーションキャプチャとの親和性により、効率が良かったそうだ。ちなみにMayaはレンダラとして活用するようなイメージで使用された。
格闘シーンで用いられたセスタスのジョイント配置。MBにはデフォーマ等の機能がないため、基本的には補助骨のみでリグの構築を行なっており、サブディビジョンサーフェス等の処理はレンダラとして機能しているMayaで行うかたちをとっている。本作の他キャラクターもこのジョイントの形式を流用しており、短期間で30体以上にのぼるセットアップを行うことができた。
補助骨運用のリレーションの一例。ノードベースで数値をそれぞれ調整し、肘の数値を4つの補助骨に渡している。
フェイシャルリグ&セットアップ
セスタスのフェイシャル。主要キャラクターは、ジョイントとブレンドシェイプの両方が実装されており、それ以外のキャラはブレンドシェイプのみを用意。アニメではテンプレートな表情を超えて大袈裟な顔を用意する、というよりは決まった表情を決まったタイミングで行えることが重視されるため、基本的にはブレンドシェイプで運用、カメラから見て補正が必要な場合はジョイントでの微調整が行われた。
ゆれもののセットアップ
髪とハチマキは綺麗な揺れ感を出す必要があるため、従来のFK制御、またはMBのDamping(3D)という自動制御、2つの機能を活用した。FK制御では根本、中央、先端でコントロールできる部位を分け、揺れもの特有の動きをアニメーター側で大まかに制御することができる。
スカートの場合も髪などと基本は同じだが脚の稼働に合わせてスカートの骨も動く仕組みを追加している。屈伸等急な角度では対応できないことが多いため、そういった場合は手動での調整を行う運用をしている。
ポンペイの街並みを再現した背景美術
CityEngineで生成されたポンペイ
背景のポンペイの街並みの制作にはCityEngineを使用。学術的に再現されたポンペイの街並みをプロジェクトに活用している。
イメージボードに合わせて色などをつくり込んでるが、ショットによってはPaint風処理などを撮影時にFlameで足している。
CityEngineで作成されたポンペイ市街地全景モデルは、モデルデータが膨大すぎるのでUnityに読み込み、作品に必要な大通り周辺以外の不要な部分を削除してFBX形式で出力した。
背景モデルの調整
Unityから出力したFBXデータをMayaで読み込みデータの最適化を行なったあと、イメージボードに合わせてマテリアル設定・ライティングを行った。アップ用にディテールが足らない部分はジオメトリー、テクスチャの改修を行う。
背景の質感設定
背景モデルにマテリアル設定とライト設定を済ませた状態のレンダリング画像。
3,000人が登場する群衆の表現
Unityで作成した群衆表現
群衆についてはUnityで作成している。モデルのリダクションを行なっているとはいえ、闘技場に3,000人並ぶのでデータが重くなるため、ゲームエンジンであるUnityを使用することになった。
細やかな作業が行われたエフェクト&撮影
エフェクトは表現によりツールを変えて作成されている。炎はHoudiniで汎用素材を作成し、Flameにてリマップやディテールの足し引きなどを行い作成されている。パレードで舞う花びらなどはMBのパーティクルを使用している。
撮影はFlameで行われている。Flameを使った理由としては、LOGIC&MAGICが普段から合成の主軸にFlameを置いているという点が大きかった。
合成全体のBatch Schematic。赤いCompassがHoudiniの炎を合成している個所。画面左下はAction Schematicで、3DCG背景を読み込み、松明の位置に炎を配置することで立体的なカメラワークにも対応できるつくりにしている。
1つの炎は画像のBatchSchematicのノード群で制御。左から[倍速>Loop>TimeOffset]と処理し、ColorCorectで輝度を調整しStylizeノードの「ColorSmudge」を使用することで、ショットによって多すぎる炎のディディールを削ぎ落している。その後、Timewarpで2コマ打ちの処理を加え、波ガラスの処理のあり/なしで上下分岐している。スーパースローのときは炎の絵を止めて波ガラスのみの処理に切り替えて使用している。
花びらのエフェクト
劇中で出てくる花びらや雨の粒子には、MBのParticleShaderを使用している。シーン上でリアルタイムに降り注ぐアセットを用意し花びらや雨が降り注ぐ中、アニメーション作業は行われた。
花びらのテクスチャはMayaでライティングと回転アニメーションを付けたABCの3種類を使用。MBのVideoSettingsでPlaySpeedとOffsetを変えることにより、9種類のバリエーションを作成している。
MBで標準で用意されているCubeを9個用意し、各バリエーションのテクスチャを適用。ParticleShaderは同じものを一括で与えている。
雨、雪、花びらのような環境エフェクトの場合は、StartDeltaとEmitRadiusの値を大きめにして発生のランダムさを出すと自然になる。
「Display Mode」は、花びらでは「Matte」にし、雨のような半透明の際は「Translucent」を使用。「Fade In」 /「Fade Out」は、花びらのようなMatteのものには不適合の様に見えるが少し数値を入れておくことで、発生と消滅の際に背景になじませることができる。
「Play Speed」は、Particleの挙動全体を早回しにしたりスローにできるパラメータで、値にアニメーションキーを打つことも可能なので、アニメ的なタメツメを利かせたエフェクトをつくりたいときに重宝する。
Flameによる撮影処理
Mayaの背景、Unityの群衆、作画のキャラクター、実写の煙を合成した例。作画キャラはActionノードにて、Flameの3D空間上に配置して合成している。
脳内シナプス表現では、SubstanceNoiseノードの模様を何重にも重ねFlameでジェネレートした素材のみで作成している。
主人公の血管の隙間をすり抜けるショットは、Actionノードにて3Dカメラワークを付け、Flameに搭載されたパーティクルで赤血球の粒子を表現し、コンポジターが中心となって仕上げた。
血飛沫や流血には、実写の素材が使用されている。図の例では、Mayaから出力された流血個所のガイドFBXをActionにインポートし、素材を親子付けして、CGキャラクターの目元に実写の血を合成している。