映画『すずめの戸締まり』のメイキング記事が公開されています。
https://area.autodesk.jp/case/animation/suzume-no-tojimari/
どうやって作画とCGの融合を成し遂げたのか
「絵の細かい部分がコントロールできるように、多少レイヤーを多めに出すなどの工夫をしています。CG背景の場合は道と家屋など細かい要素に分けて素材を出力しています。例えば、『電柱のコントラストだけを変えたい』といったオーダーがよくあるんです。そのためカットごとに『ここを分けておいたら調整しやすいだろうな』ということを考えて素材を分けていますね。」
3ds Maxで気に入っているのは作りながら考えられるところ
「Maxで気に入っているのは、作りながら考えられるところです。Maxはモディファイヤによるプロシージャル処理を挟むことで様々な特殊効果の制御を行えます。理論的に考えてアプローチする時と力技で対応する時の両方で、力を発揮しますね。
また、フィジカルカメラのレンズシフト機能はよく使っています。カメラ自体を回転せずに、垂直・垂直方向にビューを補正できるのでパースの調整を思い通りに行えます。」
CGレイアウト先行で構図を決める
「CGレイアウトで最初に構図やカメラアニメーションを確定させることを行っていました。あとは同時並行で、CGは椅子やミミズのラフ作業を始めて、作画は紙の上でCGレイアウトを基に細かく設計を詰めていくという流れです。そして、途中段階での新海監督のチェックを経て、完成に向けてクオリティを上げていきました。」
迫力あるアクションシーンにおけるCGの役割
「御茶ノ水のシーンは、実際の場所の写真を参考にモデルを作っています。主にカメラマップという技術で美術班が描いた画をCG空間で投影しています。CGでビルの大まかな形状をモデリングして、そこに細かく窓が描き込まれた美術画をプロジェクションマッピングのように投影しています。必要に応じて細かく3Dモデリングを行うケースもありますが、作画を投影することで手描き表現の良さを活かしつつ、CGならではのダイナミックな演出を実現しています。」
廃墟のホテルの臨場感を3Dで表現
「冒頭に出てくる建物もすべて3Dモデルを作っています。瓦礫や奥にあるドームなど全部3Dモデルがあって、カメラは真ん中のドアを中心に回り込んでいます。疑似的に2Dの素材だけで作っても似たような絵にはなりますが、3Dで作ると臨場感がやっぱり違うんです。新海さんは『リッチな絵』とよく言われるんですが、丁寧な絵にすることで密度感が変わって説得力が出るんです。」
躍動感のある観覧車のシーン
「観覧車は丸々3DCGでモデリングを行いました。しかし、遊園地の廃れ具合を理想的に表現するためにも、カメラマップで美術素材をCG空間で投影しています。」
打ち合わせの録画まで?!制作管理に活用されたShotGrid
「アニメ制作では、様々な素材やスケジュール、進行状況の把握が必要なります。スプレッドシートを用いた管理では『あのカットの絵はどうだっけ』と、パッとプレビュー確認するのは困難です。そこで、素材とひも付いた状態で進行管理ができれば楽かなというのがShotGridを導入した動機の一つです。」
3DCGは間口が広いことが魅力
「3DCGは間口が広いのが魅力だと思います。絵が描けない人でもできる部分がいろいろありますから。アニメーターを目指すと10年ぐらいかからないと一人前になれない、なんて言われることがありますが、CGはクリエーターの入り口としては間口が広くて、いろんな人が始めやすいところが良いと思いますね。CWFは、すごく丁寧に作品を作る会社なので、スタジオも次の新海監督の作品に向けていろいろ力をつけて、また違った映像を見せる事ができるんじゃないかなと思っています。」