TVアニメ『TRIGUN STAMPEDE』のメイキング記事が公開されています。
https://cgworld.jp/article/202304-triguns1.html
https://cgworld.jp/article/202304-triguns2.html
https://cgworld.jp/article/202304-triguns3.html
フェイシャルキャプチャの活用は、長年考えてきた理想だった
『BEASTARS』から導入したフェイシャルキャプチャを『TRIGUN STAMPEDE』でも使おうという方針の下で、R&Dを重ねました。
ヴァッシュのフェイシャルのテスト。
『宝石の国』の時代からカメラアングルに合わせて顔を自動変形させるしくみを導入しており、 これを使うと口の形状が壊れてしまうという課題があったのです。自動変形の機能を残しつつ、3ds Max上での口パクを実現するやり方を見出すために、2019年の年末くらいから、顔のポリゴンをどこまで引っ張れるか、どこまで崩せるかのテストを始めました。顔の輪郭や各パーツの自動変形の順番も見直していきました。
カメラアングルに合わせて、約50パターンの変形を用意
ヴァッシュの髪の表現のテスト。Camera-O-Maticによる自動変形機能も組み込まれている。
Camera-O-Maticによる顔や髪の自動変形。
オレンジには変形用のオリジナルツール「Camera-O-Matic」。カメラアングルに合わせて髪型・顔の輪郭・目鼻口などの各パーツを自動変形することで、日本のアニメやマンガの文脈に則った見た目を実現している。
フェイシャルリグのカスタマイズ。
シェイプマップを使い、カット単位で顔の影を調整
3ds Max上での通常のライティングだけだと、アニメ的なデザインされた影を表現できず、違和感が出やすいです。オレンジの場合は3ds Maxの[シェイプマップ]という機能を使って、少し神経質に手作業でコントロールしてクオリティを上げています。
3ds Maxのシェイプマップを使った顔の影の調整。
フェイシャルキャプチャした口の形状を、ポーズモーフで補正
口に関してはフェイシャルキャプチャしたデータを割り当てるだけではアニメ的な画にならなかったので、強制的にアニメ的な口の形状に補正する[ポーズモーフ]という独自機能もCamera-O-Maticの中に追加しました。
コマ打ちのワークフロー。
リミテッドアニメーションのキモであるコマ打ちは、プライマリアニメーションの段階でAfter Effects上のタイムリマップを用いて行います。ここで気持ちの良い動きを決め込み、タイムリマップのキー情報を独自ツールで3ds Max上に表示して、実際に使う画をコントロールしていきます。
『AKIRA』のリップシンクを進化させたような表現を目指した
アニメーションのワークフロー。
モーションキャプチャからフェイシャルキャプチャまでのながれ。
キャプチャしたいのは、スピード感ではなく動きの情報
プレスコのタイミングやテンションに合わせながら、6人のCGディレクターがMVNを着て演技します。キャプチャしたデータをアニメ的な動きに自動補正する独自ツールも、いろいろとつくってあります。
コートのセカンダリアニメーション。AE上のタイムリマップで設定したコマ打ちのキー情報を3ds Maxに表示し、それに合わせてセカンダリアニメーションを付けていく。コートのセカンダリの手法は3種類の中から選択する。
1つめの手法。mClothは日常芝居で多用する。シミュレーション計算用に軽量化したコートのモデル(上)にmClothを適用(下)し、その結果を本番用のコートのモデルに受け渡す
2つめの手法。FKによる簡易シミュレーションで、大きく動く日常芝居で多用する。コートのモデルはIKバージョンとFKバージョンの2種類を用意してあり、走りやジャンプなどの大きな動きをともなう場合はコートのFKに対して簡易シミュレーションを適用する。
3つめの手法。IKによる手付けのキーフレームアニメーションで、アクション芝居で多用する。
自動変形や補正ツールには、絵心を補完する役割もある
第1話のプライマリアニメーション。
第1話のセカンダリアニメーション。
第1話の完成カット。
『宝石の国』の口パクは作画素材で表現していましたが、絵心がないと、どこに置くのが最適なのか判断が難しかったのです。ツールによる補完が必要だという結論になり、現在のしくみが構築されていったという背景があります。
レイアウトから最終的な画づくりまで一貫して担当してほしい
鼻の影はアニメ的な記号なので1コマずつチェックして整えていく必要があります。アニメーターは3da Max上でのレイアウトやアニメーションから、レンダリング、AE上でのコマ打ち、コンポジット、場合によってはエフェクトの配置まで一貫して担当するのがオレンジの良い部分であり、……課題でも
涙をコンポジット工程で追加。涙の出るポイントの位置と回転の3D情報を3ds Maxから取り出してAEに読み込む。その3D情報とAE上の2Dの画をリンクさせ、マスクアニメーションで顔の形状に沿った立体的な涙のながれを表現している。
もっとアニメの情報量を上げたいと思い続けてきた
アニメCGをつくり始めてから『TRIGUN STAMPEDE』にいたるまでの間、もっとアニメの情報量を上げたいと思い続けてきました。実際、オレンジがつくってきた作品を見比べていただくと、段階的に情報量が上がっていると思います。どこまで上げて良いのか、どこが上限なのか、探り続けています。ただ、情報量が多くても気持ちの良い動きになっていれば支持されると思うのです。それを目指して今後もがんばっていこうと思っています。