『FINAL FANTASY XVI』のメイキング記事が公開されています。
https://cgworld.jp/article/202309-cgw301-ff16-01.html
https://cgworld.jp/article/202309-cgw301-ff16-02.html
https://cgworld.jp/article/202309-cgw301-ff16-03.html
『FF14』開発チームが挑んだ新しい『FINAL FANTASY』
ストーリードリブンであり、召喚獣バトルが存在し、オープンワールドではない世界でアクションをベースにしたゲームをつくる、という方針を最初に決めました。
新規設計の内製エンジンが支えたワークフロー
本作は新規設計の内製エンジンで開発されている。これについて「汎用的なゲームエンジンや社内の内製エンジンを使った際のサポートの工数を考えると、ゼロから自分たちで開発・管理をする方が適していた」
内製エンジンのツール類
内製エンジンは統合型ではなく、必要機能を絞った構成のエディタをセクションごとに使用している。
モデルエディタ。ルックの確認やマテリアル編集のほか、アニメーションタイムラインなどが内包されている
カットエディタ。シネマティック専用のツールで、VFXエディタなどと連携しながらリアルタイムにカットシーンの編集が可能
マップエディタ
VFXエディタ
UIエディタ
明と暗の画づくり
数値的な正確さをベースに画づくりを進めるため、現実世界の明るさを測定。火が使えるスタジオで松明、蝋燭、焚き火などを撮影し正しい値から作成した。
ライティング
シーンにおける各点での入射光の分布を事前に計算し、レンダリング時に参照するイラディアンスボリュームによってGI計算を高速化
リアルタイムの影の描画
影はライトマップではなくリアルタイムに描画している。
VFXの輝度調整
エフェクトは太陽光の下など明るい場所だと見にくく、暗い洞窟の中では眩しすぎてしまうため、周囲の明るさに応じて輝度を変化させる「ブースト」という機能が用意されている。
リソースのストリーミング
必要なLODレベルに応じてメッシュデータおよびテクスチャをストリーミングすることでメモリ使用量を低減。
現世代機のグラフィック性能を活かしたリアルなアセットをアート・3D両面から追求
カットシーンでの使用に制限をかけたくもありませんし、一方でテクスチャ解像度は限られます。そこでタイリングテクスチャを活用して、それを複数ブレンドしながら密度感を出し、クオリティを底上げしていきました
キャラクターの礎となるコンセプトアート
キャラクターは、完全にリアルな顔ではなく少しイラストを基にした感じを目指されている。
人型キャラクターの顔モデル制作
様々な国籍のメンバーが集う開発部内のスタッフを3Dスキャンした。
ブレンドしたベース顔を作成。そこからスカルプトを加えて各キャラクターの顔として造形していく
目の造形
目の周辺は、眼球のサイズを年齢に関わらず2.3~2.4センチで固定している。
髪や毛の表現
頭髪が生える下地となるメッシュをつくり、そこからカーブを配置。アートの髪型に合わせて調整
重なりや奥行きを表現するためのセカンダリオクルージョンとして髪型依存の陰影をUV_map2にベイク
毛は全て共有テクスチャを使用。
衣装制作のながれ
衣装はMarvelous Designerで制作。
衣装テクスチャはノーマル、メタルネス、ラフネスなどPBRとして標準的な構成。クライヴは1辺1,024ピクセル✕8枚(内部パーツ含む)+髪の毛共通2,048ピクセルの9枚、シドは1,024ピクセル✕4枚+い512ピクセル✕1枚+髪の毛共通、など枚数・解像度はキャラクターによって異なる(各枚数に、それぞれPBR要素分のテクスチャが加わる)
ZBrushへ移行してスカルプト。細かい傷はタイリングテクスチャで入れるため、比較的大きなディテールのみ追加する
“3Dコンセプトアート”から実制作を進めた召喚獣やモンスター
モンスターらは、その全てに詳細なアートが用意されているわけではなく、必要に応じてZBrushによる3Dコンセプトアートとも呼べる造形をラフにスカルプト、それをDecimation Masterなどでポリゴン数を減らして仮のボーンを入れ、動くコンセプトアートとしていったん実機出力。
ポリゴン数としてはトルガルは約18万で、約30万のイフリートや約28万のタイタンと比べて少なめだが、毛のポリゴンカードの関係で頂点数が非常に多くなっており、負荷的にギリギリまで調整された結果だ。
タイリングテクスチャの活用
大きなテクスチャの使用を減らしつつ密度感を得るために、本作ではタイリングテクスチャが多彩に活用されている。
Substance 3D Painterで作成したタイリング用マスク
自然物を意識した召喚獣の質感表現
召喚獣フェニックスの羽や体表を迸る光彩は、マテリアルに設けたエミッシブスクロール機能によって実現。
シヴァの皮膚にはラメ状の質感が加えられている
マイクロシャドウによる陰影の描画
AOマップとノーマルマップによって細かい陰影を擬似的に描画する「マイクロシャドウ」では、ハイメッシュからローメッシュへベイクした際に欠損した微細な凹凸感を補う。
汚れや濡れの表現
パラメータで動的にコントロールできるほか、重ねることも可能。いずれもコモンテクスチャを用意して3方向から投影する方式。
濡れると水滴が自動で付与され、重みで少し下がり風揺れの影響も受けづらくなるよう設定されている。
状態異常はファンタジー世界を構成するのに必須の表現だ。
頂点シェーダによる揺れ
Maya上の頂点カラーペイントで揺れの影響度を調整する。
NPCのバリエーション制作
左からベースモデルの例、そこから肩・腰・袖のパーツを外した例、さらにパーツを移植した例、移植したパーツの移植元。兵士は顔・髪が見えない分ポリゴン数が節約され10万程度、村人はそれより1~2万ほど多めにまとめられている。
デカール(UVセットで指定した領域に描画を重ねる)を活用したディテールアップ
プレイヤーキャラクターの魅力がストーリーへの没入感を引き出す
モーションの種類
モーションの扱いとしてはチョコボと同じくモンスター枠に近いなど特殊な立ち位置。プレイヤーと触れ合うキャラクターとしては随一のモーション数が実装されている
モジュラーリグシステム「CRAFT」を活用したリグ
クライヴは約600以上のボーン数となっている。
召喚獣で基本的なリグ構造は共通となっている
モーション制作のポイント
バトルアクションのコンセプトは「レスポンスと見た目の整合性」。
大迫力の召喚獣合戦
イフリートらしさとクライヴらしさを両立したようなアクションとして仕上げられている
召喚獣合戦のイベントシーンでは、基本的に絵コンテは用意せず、企画要件・シナリオを確認したら即座に実機データまで落とし込んだVコンテをつくり、それを基に作業が進められる
モーションとカメラを出力し専用エディタでシーン作成、実機確認。
トルガル・チョコボのモーション
敵に攻撃もする本作のチョコボは、デザインもこれまでになく重厚で凛々しいため、アクションもそれに沿うように勇ましいものとなっている。
繊細なフェイシャルアニメーション
フェイシャルパーツは共通しているキャラクターが多く、それらは共通のしくみで構築
エディタ上でFacialPoseトラックを追加し、フェイシャルリファレンスを時間軸上にクリップとして割り当て。FacialPoseトラックは複数追加でき、フェードイン・アウトやブレンドが可能
イフリートは一見あまり表情がないような印象を受けるが、人間キャラクターと同じくらいの数のコントローラが用意されており、細かな表情変化を見せる
Bonamikによる揺れものの設定
Bonamik設定時の様子。最大48のBonamikグループが設置可能で、ジルの場合は髪・リボン・スカートなど26箇所設定されている
ランタイムでの物理演算のみならず、カットエディタ上でBonamikの揺れをベイクしてMayaにもち込み再度調整することも可能
IKの自動切り替え
Mayaでのモーション作成時には、四肢のIKゴールのウェイトをワールドやローカルに簡単に切り替えることができるようになっている
キャラクターのリグとは別のコントローラ内にIK-FK切り替えなどと共に集約されている
ワールドの状態で胴体をスライドさせると、コントローラは置き去りにされるため手足がそれに引っ張られてしまうが、ローカル時には胴体に追従するためポーズが破綻しない
地面の傾斜に合わせてポーズを補正するLeanIK
LeanIKの効果によって地面が傾斜してもそれに沿ったポーズになる
四足キャラクターは常時LeanIKが有効になっており、後述するFootIKでの接地とは別に胴体・重心を補正する。
補正を有効にすることで、坂の高い側へ重心が調整される。
戦闘中の補正機能
手首をターゲットの方向に向けるIKシステム「ショットIK」。魔法を撃ったときの腕の向きを自動で補正してくれるため、例えば相手が地面にいるのか中空にいるのかなどで個別にモーションを用意する必要がなくなる。
足と地面とのインタラクション
どんな地形でも足がきちんと接地するFootIKを実装している。
アキレス腱が伸び切ったような不自然な姿勢
足首を回転させ踵を浮かせるための計算精度、足首・つま先の回転限度角や回転速度などが指定可能
モーション作成時のリグには足元に接地用のIKターゲットが用意されており、指に用意されたリグが接地用IKターゲットとの接地判定を検出し自動でそれぞれ曲がる。