参考資料

自社開発レンダラ「PPixel」で描くポリゴン・ピクチュアズの新感覚アニメ〜TVアニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』

TVアニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』のメイキング記事が公開されています。

https://cgworld.jp/article/202208-establife.html

 


作画アニメファンも魅了する表現をフルCGで

表現上のポイントについて「とにかく線を大事にすることを意識しました」それを実現する上で重要な役割を果たしたツールがPPIの自社開発レンダラ「PPixel」。

これはNPR表現に特化したレンダラで、強弱のついた輪郭線を描くなど、作画的表現をCGで行うための機能を数多く備える。PPixelはレンダリングの速さが特徴で、これまでのプロジェクトでも部分的な運用を行なってきたが、開発が進んだことと、柔らかいキャラクター表現が求められる作品制作のタイミングが合致し、本作での全面採用に至った。

 

自社開発レンダラ「PPixel (ピクセル)」

本作で本格導入されたPPIの新たな自社製レンダラPPixel。この開発は同社が従来使用してきたMental Rayが2017年に開発終了したことに端を発している。

Mental Rayの継続的な使用が難しいとされていた当時、開発チームはそれまでのレンダラのノウハウを引き継ぐ新たなレンダラの開発に着手。『GODZILLA 怪獣惑星』(2017)などでは複雑なディスプレイスメントのコンターライン表現が困難であった怪獣や大きなアセットのレンダリングなど部分的に活用され、それらの実績をふまえ本作で初めて全面的に採用されることになった。

PPIでは以前からシェーダに関してはPPIShaderと呼ばれる独自の内製シェーダを活用してきたが、PPixelの開発により、PPIではシェーダとレンダラの両方が自社開発ツールとなった。

PPixelには全体的にレンダリングの回数をできるだけ減らすという設計思想があり、レンダリング時間もMental Rayと比べ5分の1程度に圧縮できた。現在はHydra Render DelegateによるUSD対応などの開発が進行中。

 

手描きのニュアンスを表現する輪郭線。PPixelの目玉機能とも言える輪郭線描画は、「デザイナーが手で描いたような線」の表現を目指し、マスクで指定した箇所ごとに太さを変えたり、2Dノイズで強弱を加えることで実現している。

 

眉の透け表現

従来のMental Rayでレンダリングする場合、レンダーレイヤーを3層に分けて別個にレンダリングしないと綺麗に出なかった。PPixelは計算の処理を一度のレンダリングで2回行うことができるため、1回のオペレーションで前髪と眉を綺麗に出すことができる。

 

2号影

作画アニメでよくみられる表現として、キャラクターの一部にはどのようなライティングでも影になる箇所が「描き影」として存在し、逆光になった場合でもその部分がより濃い影として入るというものがある。この影を「2号影」と呼び、PPixelでもこれを実現するための機能が実装されている。

 

顔周りの影

キャラクターの前髪が肌に落とす影と白目の影はアンビエントオクルージョンでつくっている。グラデーションのないオクルージョンを作成するノードを用い、髪の真下と左右にズレた合計3パターンをつくり、Nukeで適宜合成して影にしている

 

髪のハイライト

髪に入るハイライトは、専用ノードで直感的に配置することができる。プロシージャルでつくられているため、解像度の問題は生じない。

 

擬似スペキュラ

鼻筋や唇、素肌などに入る固定ハイライトは、対象となる部位にロケータを配置すると、ライトが常に同じ角度でついてくる構造になっている。ハイライトとして計算されているため、見る角度によって形が微妙に変化する。

 

半透明表現

メガネやランプなどの半透明の表現においては、先述の眉と同じように、従来は半透明部分と不透明部分、さらにそれぞれの輪郭線を別のレンダーレイヤーでレンダリングし、合成する必要があった。

 

エッジのスペキュラ

アニメ的なエッジの光を表現するノード。オブジェクトの曲率(どのくらい曲がっているか)を自動で調べ、しきい値を超えた範囲を光源と関係なく擬似的なスペキュラとして出力する。

 

レンダリング素材

一度のレンダリングでEXRに書き出されるAOVを一覧にした画像。

 

ルックデヴ

カメラドライバーによる自動補正

 

マルテースの弾ける動きの検証

マルテースはスライム人間という設定で、弾丸で撃たれても弾け飛ぶだけですぐに復活する。このルックを実現するためのモデル検証を事前に進め、Houdiniを使って表現した。

 

シーンメイキング

大勢のアイデアが集う闊達な制作現場

 

4話:マルテースの脳内国会

データがPPixelでそのまま使えることなどもあり、シーンアセンブリツールでキャッシングを使ったワークフローを採用している。これにより一度作成した複数のアニメーションを蓄積しMayaのみで完結することができた。

 

 

2話:路地裏でのフェレスの発砲

俯瞰図と絵コンテ上の位置関係を照らし合わせている

 

10話:街頭ビジョン

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