参考資料

映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」メイキング

映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」のメイキング記事が公開されています。

https://cgworld.jp/feature/202106-hathaway.html

<1>本作の世界観構築に寄与したモデリング

モビルスーツの3Dモデル

本作では初期段階からCGチームが合流。設定画を基にモデルを作成するのではなくデザイン作成と同時進行し、2016年頃から約2年間かけ、実際にCGモデルで検証しながらデザインを固めていった。その過程では、モデリング参考として、デザイナーによって粘土の原型まで用意された。

作品世界の中では敵側の立場であるという面を意識し、ガンダムらしさを排除した造形に。ラインについてはデフォルトで密度を少なく設定し、スッキリと見せている。

アップ時に密度を増やす仕込みも行なったが、本編では基本的に少ないラインで統一。またルックについては、シーンによって色替えできるように色替え用テクスチャも用意された。

ペーネロペー。こちらはΞガンダムとは対象的に、ガンダムらしさを押し出した造形となっている。

フライト・フォームへと変形するが、飛行機ではないことを意識したため、生き物的な柔らかい動きが求められた。

 

メッサーF01型。スカートは滑空の際の姿勢制御に使用するという設定に基づき、空気抵抗が感じられるサイズ感と可動域をねらっている。

大型シールドは粘土造形から何度も試行錯誤した部分で、陰の出方などに関わる面取りが細かく調整されている。

 

360度空間を再現したコックピット

コックピットも全天周モニター含め、3Dで作成した。これはサンライズ第1スタジオが作成したガンダムシリーズでは初の試みで、UIが3D空間に配置されるため椅子の回転もトレースできる。

コンソールモニターはCG側でターゲットのみ設定しておき、撮影段階で素材の貼り込みを実施。モニターが点灯していないカットでは、GIを用いて異なる雰囲気の画づくりを行なった。

 

<2>リアルとケレン味の絶妙なアニメーション

緻密に設計された雲の表現

リアリティを追求する姿勢は空中戦においても徹底されている。地上が背景として映る場面では、バーチャルの地球儀を用い、高度やカメラの位置に合わせて正確に地形や街を描いた。また、機体が降下したり上昇したりする速度と時間から、各シーンの高度を計算している。

 

ガイド用雲素材。三角形のポリゴンを大量に配置して雲モデルを作成。ポリゴン同士の間隔のちがいでいくつかのバリエーションを用意した。

ガイドを使用したアニメーション作業

完成カット。カットによってはBOOKだけでも数百におよぶ美術素材の中、調整を重ねて完成に至る。

 

物理挙動を意識したファンネル・ミサイル

本作ではそういったケレン味の強い表現とは異なり、現実的な挙動のミサイル表現を目指した。基本的に軌道は担当アニメーターに任されているが、物理法則から逸脱するような動きにはしない。

また、あくまでも誘導ミサイルという表現にはしたくなかったため、敵を追いかけるように何度も方向を変えることは禁止した。

増尾氏による軌道修正指示。Fusion Studioを用いて動画に直接軌道を描き込み指示を出すこともあった。

 

<3>CGの良さを活かしつつ作画と融和した背景

"動く美術"を体現するカメラマップ

海などの最終画までCGで作成する背景に限らず、最終的には美術素材となる箇所についても、多くのカットでCGガイドを作成。背景は距離感まで正確に設計されており、その設定に合わせてキャラクターが歩く速度や歩数まで計算されている。

本作では約30ものカットでカメラマップを使用。美術らしくレンダリングした背景素材に対して美術チームにレタッチを加えてもらうことで、3D的なカメラワークでも違和感のない仕上がりとなっている。

モデルのUVチェック

コンセプトデザインのpablo uchida氏が作成したイメージボード

レンダリングした背景ベース。GIによるライティングテストを経てこちらの工程へ

 

Houdiniを用いた夜の海

夜の海はHoudiniを使用して作成。

Oceanのポイント作成工程。Oceanではポイントのアトリビュートを使い波の分布や見た目を詳細にコントロールできる。ディレクションに対応できるように、あらかじめポイントを複数に分けて用意した。

 

Houdini FLIPで構築した昼の白波

終盤に向けて物語が大きく展開していくきっかけとなる浜辺のシーン。穏やかな海が嵐の前の静けさを演出する。そんな昼の海については、約半数のカットでHoudini FLIPが用いられている。それ以外のカットではMayaのBifrostが使用されている。

 

tyFlowを活用した破壊表現

この崩壊の表現にはtyFlowが用いられ、その上で大きく分けて2種類の手法が採られている。まず、1つ目は「擬似的に関節をつくる」方法だ。Voronoi Fracture等を使用して、tyFlow内でオブジェクトを細かく分割し、擬似的な関節を作成する。そうして関節をもったオブジェクトに対して、衝突やフォースによる変形シミュレーションを実施。その後、tyParticle Skinモディファイヤで、別の同形状オブジェクトにシミュレーション結果を反映させる。

 

2つ目は「複数のオブジェクトを繋げる」方法だ。あらかじめ、崩壊時に折れ目となる部分ごとにオブジェクトを切り分けて作成。Bind機能でそれらをつなぎ合わせ、1つのオブジェクトとしてシミュレーションを実施する。

シミュレーション後の修正作業画面。画像左はシミュレーション後のモデル。画像右は、修正後のモデル。画像左のモデルに対して、FFD等でさらに変形させた。

 

崩壊するカーゴ・ピサ内で激しく舞い上がる火の粉の制作について見ていく。こちらはAfter EffectsのTrapcode Particularを使用してコンポジットで作成。

After Effectsで作成したことで平面的な表現になってしまわないように、火の粉のレイヤーを多層化した上で、カーゴ・ピサのZDepth素材を組み合わせて構成した。ここでは火の粉の調整用マスクとして使用。3D空間と2Dエフェクトに一体感を与えている。

 

増尾氏による指示。サンプルキャプチャに対して、ちぎれるタイミングや方向などを、文字や記号で指示している。

 

Houdiniでの修正作業画面。閉鎖空間で大量のオブジェクトが複雑な動きをするシーンのため、手描きの指示が難しい場合には、fbxファイルで出力したデータをHoudiniに読み込んで修正することも。そちらを参考にカット担当者が作業していく。

コメントを残す